薄明へ 柏木麻里
靄は ゆれて
こわれながら
なにを
そんなに言いたかったの
岸をなくして
きのうが
きょうに辿りつこうとする
薄明の海
まだ
溶けていることばへ
たゆたいかえす透明な舌
呼ばわるような
曙光に
あたためられて
囁きが ほの白く
波間に身をおこしては
空へ
聞きとられてゆく
想いに目をこらすのはだれだろう
なにも知らない青さで空がうみなされている
わたしたちをひとつに蕩かした、遠いあわいから
うちよせてくる
目醒めを うすい皮膚でまもって
名もない
からだの岸へ
あたえる
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