『現代詩手帖』1995年1月号 投稿欄




摩擦熱/摩擦の響き      柏木麻里




てのひらとてのひらを
合わせ
こすり合わせると
まずそこからはじまる
あわいあたたかさ と
ぬめりのある丘の
へこみとふくらみ が
出会い 移動する
てのひらをはなしても まだ
しびれが
ふれている


 *


黙ったままの
眼の世界でのあなたとわたし
わたしの感触の遠くで
おぼろげにひっかかれていることが伝わる
  なにか
わたしは 閉じていて
どこかが開いている
眼の世界を閉じ
皮膚でへだてられたあなた(わたし)
の正確さの
彼方に聞こえている話し声
中間に生まれている
灰色の波









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