靄がほどかれて 柏木麻里
薄明
わたしが舫われている
波打際
ゆれは
だれの匂いなのだろう
もってゆけない
*
空がたえずうごいているから
靄
こわれていく、からだ
(ふくんでいた)
うまれては、
声へとあふれでるまえに
うしなわれてしまうことば
*
いくつもの思いが薄明にたなびいている
見わけられることなく
*
靄は
余ってしまった息たち
だれかから
宛てられていた
*
わたしたちの匂いはふかく結んでいるのに、
どれだけ触っても
あなたのからだになることができない
のこされた、
吐息と吐息
遠くまじわっている 靄
からだが行ってしまったあとで
息が もういちど胸にかえりたいとおもう
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