透視図 柏木麻里
音楽が鳴りやんだ
あとにも
この部屋は
どこか別のところ
ああ
そう
部屋は
音楽の周囲に浮かんでいる
あの透明な細胞(セル)
のひとつにすぎなかったのだ
青と緑にふちどられた世界は
終わってしまった
透視図の中に
失われていく後姿を
追いもとめても
いま
どの辺りを
遠ざかっているところなのか
それとも
どこかで立ちどまっているのか
感じることはできない
もう年をとらない者のことを
考えようとすると
どんどん
部屋の数がふえていく
バタンバタンと
戸をあけ 入り 通り 見まわし くりかえし
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